いつかはわからぬが、今ではないどこかの場所に、ある姉妹がいた。
おかしな疫病が流行ってからというもの、良家の子女は外界と接する事を禁忌とされ、
裕福であったその姉妹は殆どの時間を屋敷で過ごしていた。
姉は女であった。妹はまだ男を知らなかった。
しかしこの世界では、男は使役の生き物であり、女性のために仕えるひとつの道具にすぎなかったため、
特に男を知る必要もなかった。
そういう世界の話である…。
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おねぇさま、先日あの者に怒ってらしたでしょう。
そう、いつもの月初め、おねぇさまの大事なところが赤く染まるあの日、
おねぇさまは何時もより気が立っていらした。
食事の時に少し気がついたの。何時もと違う匂いがする。あぁ、今日はその日だって。
普段仕え人として身の回りを世話しているあの者に、夕刻激しく当り散らされていたでしょう。
だって私、ガラスの割れる音がして。猫が飛び出すものだから、急いで追いかけて。
そしたら、おねぇさまが、あの男をひざまづかせ、臀部を平手打ちしていらした。
わたし、それが何かよくわからなくて。でも目が離せなかったの。見入ってしまったわ。
初めて男の臀部を見たけれど、それはなんだか汚らしかった。
肌の色も白くないし、なんだか黒黒と縮れた毛がまとわりつくように生え茂り、影に覆われていてみっともなくおぞましかった。
でも、おねえさまはその汚らしい臀部を、汗を湿らせたまるで臭い立つかのような臀部を、
その白い手から延びる手で何度も打ち鳴らしていらしたわ。
おねぇさまの大事なところから滴り落ちる血と同じ色になるまで。
あの男はもう気が逝っているかのようだったけど、二人とも恍惚としているかのようにすら見えて。
ただ只管、執拗に手を振り下ろし続けている様から、私、目が離せなかった。
それはもう、なんだかひとつの儀式の様で。
気づけば私、息がしづらくて。
胸となんだか、そう、私の大事なところが、とても熱くて。
腫れているかのように血が通うのを感じたわ。どくん、どくん、と。
なんだか熱くて花の芯があるかの様にその中がジンジンして、
少し体を動かしただけで、白い布切れ一枚が僅かに擦れて、その部分を撫でるの。
すると、もどかしい位に熱を持っているのがわかった。
あの者が気をやって声すら出さなくなった頃、
おねぇさまは立ち上がって…
履いてらした靴のかかとを、血まみれの臀部の奥、そう、最も汚らしい部分に、
その細い踵の先をゆっくりゆっくり、刺された。
あの男が気を取り戻して声を漏らすと、
凄く嬉しそうに、見たことも無いような美しいお顔で、おねぇさまは、
ただゆっくりとその踵の先を突き入れていらした。
ねぇ、おねぇさま、私知ってるの。
何時もはあの者に、その赤い血を舐め取らせているでしょう。
赤い血が出ていない時は、透明なそこからあふれ出るものを、味あわせているでしょう。
だって、私、本当は何時も見ていた。
おねぇさまのお部屋で行われる、あの汚らわしいような舌が、おねぇ様の真っ白な体で這いずり回る行為を。
その豊かな乳房は羽のように軽く指先でなぞられ、乳首は固く形を変えていたわ。
おねぇさまは時に自分で撫でたり、指でつまんだり、舐め犬に舌を許し丁寧に転がすよう命令されていた。
こうやって…
それを見ていて私、自分の体がもどかしかったの。
よくわからないけれど、何処もかしこも腫れてしまったみたいになって。
私の大事なところからトロトロと何かが溢れているようで。
気づけば物凄く濡れているんですもの。何かよくわからない透明な液が、沢山…。
ねぇ、おねぇさま。
私の知らない秘密、私の知らないこの先に何があるのか、私知ってもよろしくて?
大丈夫、教えてとは言わないわ。
先ず私が、何時も見ていたあの舐め犬の行為を。
おねぇさまの大事なところから滴り落ちるものを口で味わわせて。
見ていたから、舌の動かし方もわかるの。
ねぇ、おねぇさま、私の、私のここも同じようになっているかしら。
ほら、見て。おねぇさま。
私の、ここが、とてもおかしくなっていて…
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私ずっと屋敷にいたから、毎日毎日同じ事の繰り返しだって思っていた。
起きて食事を摂って、編み物をして読書をして、時に外を見て。それだけが続く毎日だって。
でもね、ある時わかったの。
私の知らない何かが、屋敷の中でおきているって。
何時も同じなのは私だけだって。
でももう同じじゃないわ。
ねぇ、おねぇさま。もっと…もっと密かなる楽しみを。