眠れないなら、
何かが頭を擡げるなら、
何かすらわからない「何か」が自分を覆ってしまいそうなら、
夜明け前の空を見るといい。
一瞬として同じ顔はない。
だから、ただ見続けるのではなく、
建物脇の、くの字に折れ曲がる階段を登りながら、
空へと進む時に眺め、
空を背にして更に歩を進め、
また空に対面する時、
その違いに気づく。
たった五秒そこらで、色味から地平線の表情まで、新しい。
視界はパノラマ、グラデーション。
くすんだ色彩も何もかもが清らか。
圧倒的な広がり。
五秒ごとに対面するのは、変化し続ける夜明け。
それを目にしてなお「何か」は残り続けている?
そんなことなかったかのように清廉な心が静かに呼吸をし始めていない?
写真に収める事なんかじゃない、
生の美しさと動きがそこにあるでしょう。
そんな陳腐なものにしてしまいたくないと思える生きた美しさが。
それがわかる頃には、安らかな自分となっている。
だから、そんな夜明け前が、好き。
他にも理由はたくさんあるけど、
そんな事すら気にならなくなる、夜と夜明け前と、空が好き。