漫然と生きていた。
何時か死ぬなんてあたり前の事で、当たり前すぎて、
自分に縁はあるはずなのだけれど、実感なんてこれっぽっちも無かった。
だってお試し死なんてないし、死を学ぶ機会もなければ味わう事も無い。
勿論自殺なんて、そんな気もさらさら無い。
だからといって死にたくないわけじゃない。
ただ、生きたいとも思わない、死にたいとも思わない、
それだけの事だった。
無限な気がして、毎日は繰り返しだと思っていた。
只管繰り返して繰り返して、いつかは老いて、いつかは死ぬのか。
死ぬ?
全くわからない。遠い事過ぎて。
だからそんな事考えない。
ただ、永いなぁ、それだけが気が重くなる一つのことってだけで、
日々は淡々とやってき続けていた。
気の遠くなるような永遠を実感する事もなく、
ただずっと続くという脅迫の様なものだけが僕の感覚を脅かし続ける。
繰り返しとは残酷だ。だから何時しか考えないように漫然となるのだろう。
生きる適応だな、なんて思ったりして、
酒を飲んだりくだらない事をしたり、時には涙したりして、でも全ては繰り返しで
何となく生きていたんだ。
そう、何となく。
ある時医者は言った
「余命2ヶ月です」
家族は果てしなく絶望した。
僕は初めて自由とリアルを手に入れた気がした。
もう途方も無い無限ではないのだ。
有限とは何と実感のあるものなのか。
絶望なんかじゃない。
生きる希望は絶望と隣り合わせにあったのだ。
二つでひとつかのように。
有限を知った僕は解放され、初めて生きる実感を手に入れた。
今日からがほんとうの僕の始まりの気がする。
おはよう、世界。